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1923年9月1日、神奈川県を中心に未曽有の被害をもたらした「関東大震災」。その甚大な被害と多くの犠牲の記憶は、いまも地域に深く刻まれています。100年の節目を迎えた2023年、防災塾・だるまをはじめとする関係団体は、過去の災害を学び、未来に活かす「語り継ぎ」の取り組みを進めています。
このページでは、関東大震災を正しく理解するために「発生のメカニズム」「神奈川・横浜の被害実態」「避難や救助の実際」「未来への教訓」の4つの視点から解説します。
【メカニズム】― 丹沢の化石が語る地震の源
関東大震災は、プレート境界型地震「大正関東地震」によって発生しました。相模トラフ沿いでフィリピン海プレートが陸側プレートの下に沈み込むことで、巨大な歪みが蓄積され、限界に達したときに一気に解放されることで発生します。
神奈川県西部に広がる丹沢山地には、かつて海底であった証であるアオサンゴの化石や枕状溶岩が見られます。これらはプレートの動きによって海底が隆起し、現在の山地となった証拠です。つまり、地震は「今ある地形の成り立ち」を知ることで、そのリスクを知る手がかりにもなるのです。

当時の横浜市域では2万6千人が犠牲になり、死亡率は東京より高かった。ドローン空撮:神奈川大学 佐藤孝治 名誉教授

はるか南海の火山島がフィリピン海プレートによりサンゴとともに付加した証拠
関東地震の原動力はフィリピン海プレートの北西進にある
👉️ 第 181回「防災まちづくり談義の会」レポート演題:神奈川県の大地誕生と地震災害の理解
講師:鷲山龍太良 「氏 (防災塾・だるま塾長 神奈川地学会幹事 防災士 )
【神奈川・横浜の被害実態】― 火災旋風と土砂災害、そして都市壊滅
横浜市は関東大震災によって壊滅的な被害を受けました。震災による直接的な揺れの被害に加え、「火災旋風(ファイアストーム)」が中華街・関内・馬車道など都市中心部を襲い、26,000人以上の尊い命が失われました。関内地区はほぼ全焼し、大さん橋の崩壊や山下公園周辺の瓦礫化も報告されています。
液状化や斜面崩壊、土砂災害も同時多発的に発生し、「複合災害」としての性質が強い災害だったことが浮き彫りになっています。



👉️ 第 193回「防災まちづくり談義の会」レポート話題: 「横浜の関東大震災」を学ぶまち歩き (関内・日本大通りコース)👉️レポート
👉️ 第 191 回「防災まちづくり談義の会」レポート話題:「関東大震災から百年」~写真や絵葉書で知る横浜の記憶~
講師 相原延光氏 元神奈川地学会会長 現防災塾・だるま理事
複合災害としての関東大震災の横浜
特別講演―防災まち歩きコースの作り方―複合災害としての関東大震災の横浜
サロン講演 相原延光 関東学院中学校高等学校地学部コーチ 防災塾・だるま理事
【人々の避難や救助】― 生死を分けた「行動の差」
震災当日、多くの人々が横浜公園に避難し、結果的に「数万人が生き延びた」と言われています。一方で、火災が延焼する方向を見誤ったり、避難の初動が遅れたりしたことで被害が拡大した地域もありました。
特に注目されるのは、消火活動や救助活動にあたった市民や消防団の「初動対応の違い」が、生死を大きく分けたという点です。現場の判断力と備えの有無が、命を守る上で決定的だったことが、多くの証言から明らかになっています。
また、停泊していた外国の客船などが救助活動に尽力したことは注目に値します。「地区」に存在する事業所等が防災資源になることの教訓でもあります。
https://darumajin.sakura.ne.jp/30dangi/dangi2018/dangi_report20180823.pdf
【教訓を未来に】― 過去の「語り部」から未来の「備え」へ
関東大震災から得られる最大の教訓は、「災害は繰り返される」という前提のもと、地域で備える力を育てることにあります。防災塾・だるまは「過去の震源域の遺構を歩く」活動や、防災教材の開発を通じて、次世代への防災教育を重視しています。
まず、地震防災で最優先されるべきは耐震化の推進です。
👉️ 第183 回「防災まちづくり談義の会」レポート話題: 「震度6強の首都直下地震に備えるための耐震化推進」講師:講師 Aサロン代表 田中 栄治氏 (防災塾・だるま副塾長)
また、学校を拠点とした防災まちづくりや、地区タイムラインの策定など、地域ぐるみの連携による自助・共助の強化が求められています。
100年前の震災から学び、次の100年に向けて私たちは「災害に強いまち・人づくり」を続けていきます。
👉️ ぼうさいこくたい2023 オリジナルセッション神奈川 Os-7 活動状況(全発表の総括報告) 令和 5 年 11 月4日 記述:田中晃
👉️ ぼうさいくくた2023オリジナルセッション神奈川Os-7のHP
👉️ ぼうさいくくた2023オリジナルセッション神奈川Os-7発表コンテンツ一覧(資料リンク付き)